元禄2年(1689)、松尾芭蕉が塩釜で盲目の法師が琵琶を弾きながら語る奥浄瑠璃を聞く。
塩がまの浦に入相の鐘を聞く。五月雨の空はれて、夕月夜 幽に、籬が島もほど近し。
蜑(あま)の小舟こぎつれて肴わかつ声々につなでかなしもとよみけん心もしられていとど哀れなり。 其の夜 目盲法師の琵琶をならして奥上るりと云ふものをかたる。 平家にもあらず舞にもあらず、ひなびたる調子うち上げて、枕ちかうかしましけれど、さすがに辺土の遺風忘れざるものから、殊勝に覚らる。 ―― 「おくのほそ道」(日本古典文学大系『芭蕉文集』)p81 |