当道雑記 5


5  あんまカミシモ十六文

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 「あんまカミシモ十六文」
 これは、上半身が16文、下半身が16文、ということ。両方セットで32文。
 まったくの無官の者があんまの施術によって自力で最下位の刻目〈半打掛〉を得るためには、カミ・シモの施術を500回から800回ほど行わなければならない計算になる。もちろん、施術による稼ぎを生活費等に充当することなく、全額を官途につぎ込むことができるとしたらの話。

  ※ 1両=4000文の換算で500回 / 1両=6400文の換算で800回

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 粒入り(官金12両)にはその3倍。1500回から2400回。半打掛の者が座入りする(官金8両)には1000回から1600回。

 明治18年(1885)の「鍼術灸術営業差許方」「按摩術営業差許方」では師匠のもとでの4年間の修業によって営業権が認められた。最低限、按摩師として自営できると見なされるレベルを担保する修業年限ということなのだろう。
 では、近世においては、その「最低限」は半打掛だったのか、それとも才敷だったのか。


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